中小企業の企業価値 バリューアップに不可欠な2つの要素

米投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントが買収チームを立ち上げて日本にオフィスを開設する。コーポレートガバナンス(企業統治)を主因とする買収の好機をつかもうとしている他の世界的なプライベート・エクイティ(PE)ファンドに追随する。

日本でもプライベート・エクイティ(以下「PE」)は活発に動いている。PEとは投資先の経営に関わり、企業価値を高め(バリューアップ)売却するファンドのことを言う。主に、大企業が対象となることが多い。

なぜ、中小企業の集客代行やっている人間が、こんな大企業向けの話をしているかというと、中小企業こそバリューアップ思考が必要だと考えているからです。また、ITとマーケティングこそが、バリューアップのための両翼になると信じています。

以下で、バリューアップの目的、企業価値の決まり方、バリューアップの方法の3点を説明していきます。

バリューアップの目的(企業メリット)

なぜ中小企業もバリューアップを目指さなければいけないのか。バリューアップの目的は2つあります。

  • 金融機関からの評価向上
  • 会社売却先からの評価向上

金融機関からの評価向上
企業運営目的とは「利益を生みだし、株主にリターンを返すこと」です(※)。中小企業においての株主は創業者(またはに創業家)で占められていることが多く、株式(以下「エクイティ」)に外部資本が入っていることは稀です。とはいえ、エクイティのみで会社を運営していくことは難しく、企業は金融機関から借入(以下「デット」)を行います。またデットで資金を調達することで、総資産が増え、企業は様々な資産に再投資が可能となります。すると、利益が増える(蓋然性が高まるため)株主へのリターンも増えます(こちらも蓋然性が高まるということ)。デットを調達して、(エクイティのみのときより)多くのリターンを得ることを「レバレッジを効かせる」とも言います。
中小企業がバリューアップをすると、金融機関からは「貸したお金が返済される可能性が高い」と判断されます。そうした評価の向上は「調達金利の低減」や「調達期間の長期化」といった実利になって返ってきます。
※ドラッカーの言葉「企業の目的は利益ではない」というご指摘は不要です。

会社売却先からの評価向上
ライブドアや村上ファンドの登場で「M&A」という言葉や文化が一般化しました。2005年以降の話です。ただし、そのときの対象は阪神鉄道・ニッポン放送等の上場企業かつ大企業で、多くの中小企業(非上場企業)経営者にとっては関係のない話に思えたはずです。
そこから10余年、後継者不足などが原因となり、中小企業にとってもM&Aの選択肢が一般化してきたと言えます。有名なのは日本M&Aセンターです。会社を売却するというのは株式を(多くは全株)譲り渡すということです。生み出される利益からのリターンを得る権利を、渡す代わりに株式の譲渡益を得ることができます。企業の価値がバリューアップされた場合、還元されるリターンは多くなります。またリターンが多くなるに伴い、株式の価値も高くなるのです(=売却先から高く評価されるということ)。

私のバリューアップ経験

中小企業がバリューアップを目指すべき理由を2つ紹介しました。ここからは、バリューアップに携わった経験を2つほどお伝えします。

  • 残庫マンションの再販
  • 中小企業のマーケィング部門立ち上げ

残庫マンションの再販
2008年のリーマンショック後、多くの企業の資金繰りが悪化して倒産(民事再生・会社更生・破産)する会社がでました。倒産した会社の中でも、優良資産を保有する会社はあり、その代表格がマンションデベロッパーでした。その当時、私は不動産ファンドにいたため、彼らの保有するマンション在庫(販売途中の残マンション=残庫)を安く買い上げ、(倒産して手入れできなかった間に傷んでいた)内装や外観を多少修繕して利益を上乗せして販売するというビジネスモデルで利益をあげていました。
倒産してしまった会社のマンションに、消費者は当然悪い印象を持ちます。そのため、販売価格は以前よりもディスカウントされます。そこに、修繕費や再販売費用のための資金を投入することでバリューアップを果たし販売していたのです。

中小企業のマーケ部門立ち上げと集客強化
2010年後半より事業会社(BtoB商材の卸)に入り、一番に取りかかったのがネット集客の強化です(※)。運良く成功したために、取引者数も売上も加速度的に増えていきました。日本全国が商圏になるというのが大きく、これまで営業マンが直に商談していく形と比べると営業効率も上がりました。
バリューアップを感じたのは金融機関からの融資姿勢の変化です。これまでは、信用金庫からしか借入できなかったものがメガバンクからも借入ができるようになりました。

モノの価値の決まり方

少し休憩。モノの価値はどのように決まるか知ってますか。3つ考え方があります。

  • 需要と供給
  • 財務諸表
  • DCF

需要と供給
需要と供給の均衡点が取引量と価格を決定するという考え方です。登山頂上付近の缶コーヒーは180円したりします。あれも需要と供給の理論に沿っていると言えます。一般消費財などは、ほぼこの理論に沿って値付けがなされています。

財務諸表
金融機関が会社の価値を判断するのに一番重要視するのはこの財務諸表です。財務諸表は、損益計算書と貸借対照表です。損益計算書では黒字であること、貸借対照表では資産価値が高く担保となるものを多く持つことが評価に大きく関わります。

DCF
「キャッシュフローの重要性」は、海外ファンド登場によって、日本に広く印象付けられました。DCFとは、モノの価値は将来発生するキャッシュフローの総和から割引率で割り引いたものという考え方です。不動産、会社(株式)は、都度キャッシュフローをうみだすため、このDCFがもちいられます。

ITとマーケティングで企業をバリューアップ

モノの価値の決まり方を説明したので、ではズバリ中小企業のバリューアップ方法をお伝えしようと思います。2つあります。

  • IT
  • マーケティング

中小企業におけるITの価値
ITと一括りに言っても、対象が非常に多く抽象的なので、事例を話します。freeeやMFクラウド(マネーフォワード)といった会計のソフトウェアはご存知でしょうか。テレビ番組のガイアの夜明けでの話ですが、金融革命のテーマでMFクラウドがでてきました。株式会社悪の秘密結社が新ヒーローのコスプレを作るのに100万円必要だったものの融資が地銀から断られていたそうです。その後、MFクラウドの新融資システムで、審査依頼したら即日審査通ったそうです。さらにしかも同じ地銀だったとのこと。何が審査を通ったポイントかというと、日々の記帳データをMFクラウド経由で、地銀の審査部が見たということです。この記帳データは、上記の財務諸表に付加する情報として地銀に認識されたということです。不思議なもので、同じ会社であってもITの力で金融機関にとっては価値が更新されたということです。こうした会計ソフトだけでなく、最近ではGoogleスプレッドシートやチャットワークやSmartHRやチャットワークやセーフスフォースといった業務効率化ツールが多くでています。直接的に融資額が上がったりしなくても、上記のようなITを導入すると従業員の生産性が向上し、結果的に残業代が減少したり、一人当たりの売上が上昇したり、雇う人数を削減できたりします。

中小企業におけるマーケティングの価値
マーケティングというと市場調査や販売戦略の立案といった全行程が含まれてしまいますが、中小企業にとって一番馴染み深いマーケティングは集客です。集客はバリューアップの効果が高い企業機能です。新規顧客を市場平均より安く獲得できる戦略を有しているとすると、その分利益や企業のキャッシュフローにプラスの影響を与えます。上述の私のバリューアップ体験の中で、ネット集客を使って商品在庫を販売した話をしました。また結果的にメガバンクからの評価改善に変わったということも言いましたが、理由は全国に安定的顧客を獲得していたことと、在庫の回転率が非常に早かったことが評価されたようです。

ITやマーケティングを使い企業価値をあげよう

上記説明してまいりましたが、ITやマーケティングを中小企業に取り込むと企業価値を向上させることが可能になります。とはいえ、最終的には経営者の判断・意思決定次第です。また、同じIT・マーケティングと言っても業種・シェア・企業規模によっても全く取りうるべき戦略が変わってきます。慎重かつ大胆な決定という矛盾を孕む道を通らなけれがならないかもしれません。ただし、今後継続的・永続的にバリューアップをする企業は、そうした矛盾を乗り越えたITとマーケティングを取り込んだ企業になるでしょう。

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